こちら記事では【漫画版】チェンソーマンの内容に触れております。まだ、これから本編を読まれる方、結末を知りたくない方は読むことをおすすめいたしません。また、私自身の勝手な解釈も含まれています。
本編を読まれていない方は、ぜひ読んで見てください!!
あらすじ
悪魔が出現した現場であるホテルに到着したアキたち6名。やる気を中々起こさないデンジは、前回のコウモリ戦の褒美が欲しいと提案する。
すると姫野は、チームメンバーに対し、今回の討伐対象である悪魔を倒すことができた者にキスをすることを提案する。
その提案に葛藤するも、結果的にやる気満々でホテル内に突入し、早速捜査に乗り込む。そんなデンジたちの後ろで、アキと姫野は今回討伐に参加するメンバーの情報を交換する。
その最中、姫野はアキと初めて出会ったことを思い起こし、アキには死んでほしくないことを伝える。その直後、捜査中のメンバーの前に部屋のドアを開け、一匹の悪魔が姿を現す。
印象に残った点
ご褒美の提案に動揺するデンジ
ホテルの捜索前に、任務にやる気を持たせるため、コウモリの悪魔戦の報酬を含めて、何かご褒美が欲しいと提案する。
その提案に対し、姫野は「討伐対象の悪魔を倒すことができた人の頬にキスをする」ことをメンバーたちに向けて提案を返す。それにすぐ反応してしまったデンジと、今回悪魔討伐に参加する荒井の二人。
この時、デンジを下から見上げるようなアングルから、風が空中に塵を舞わせている描写が挿し込まれている。これは、提案を受けたデンジも胸を弾ませ、浮足立っている、デンジの心情を表現しているようにも見える。
しかし、次のページのコマに移ると、13話でマキマと約束した「銃の悪魔を倒したら、何でもする」ということを思い出す。そして、「キスは銃の悪魔をぶっ倒してから、心に決めた人とする」と、自分なり気持ちの整理と、新たな夢への覚悟を、ご褒美を提案した姫野と他メンバーに向けて言及する。
その覚悟に対し、姫野は茶化すような表情をしながら、デンジに顔を近づける。デンジは、意識しないよう咄嗟に視線を外に向ける。そんなデンジに姫野はそっと耳打ちをする。「ベロを入れたキスをしてあげる」と。その言葉を耳に入れた瞬間、デンジは目の色を変える。
するとデンジは、他のメンバーよりいち早くホテルに潜む悪魔を討伐しようと、廊下を足早に駆けて捜索する。
話の始めは、日常パートのような緩い雰囲気があり、これから悪魔と戦闘するという緊張感を読者に与えないで、少し余裕を持たせてくれている。
そして、デンジの夢への覚悟を語ったシーンから、姫野によるからかいで、一瞬にして心変わりをし、デンジが無言でホテルの廊下を爆走して悪魔を捜索するシーンは、前後に緩急があって面白かった。
そして、いかにデンジがこのからかいを本気にしているのか伝わる。なので廊下を爆走しているシーン何より面白く感じた。
「アキ君は死なないでね」 過去と現在の心の変化
捜索中にアキと姫野が他4名の特性についてさっと紹介し終わった後、姫野はアキにこの4名が生き残れるかどうか質問する。
「一年もあれば死ぬか民間にいきます」とお茶を濁す。返答後、少しの間が空き、「アキ君は死なないでね」と自分の後ろを歩いているアキに言った。
この発言後、次のページでアキと姫野が出会った時の回想が入る。
当時、5人目のバティを亡くした姫野。その姫野に6人目のバディとして紹介されたのがアキであった。5人目のバディを失い、目の死んだ姫野が当時のアキに対し発した言葉も、「アキ君は死なないでね」であった。
しかし、同じ言葉でも、姫野がこの言葉に込めた思いは、出会った当時と現在では全く違うと思われる。それもそう、回想のシーンでは、姫野の目から完全に光が失われており、見た目通り心身ともに疲労困憊。何もかもどうでもいい、という雰囲気をも漂わせ、当時のアキに向ける視線も、何も期待していないように見える。
だが、現在に戻ると、姫野の目に輝きがあり、アキにも優しさの籠った表情で会話をしており、どことなく楽しそうにも見える。このことから、過去の回想から現在にかけて、アキと姫野の2人にもしっかりとしたドラマがあったことがわかる。
過去の言葉には、(どうせすぐに死んでしまう…。これ以上、私を傷つけないで…)という意味合いがあり、新たなバディとなるアキを拒絶することで、当時の自分を守ろうとしたのかもしれない。
また、私自身気になったセリフがある。回想シーンの姫野は他にもこのような発言をしている。「私のバディ キミで六人目 全員死んでるの 使えない雑魚だから全員死んだ」。
その言葉に口を開け、驚いている表情を見せたアキに対し発した言葉が、「アキ君は死なないでね」であった。この時の姫野は、頭部は包帯で巻かれて、右腕にも重傷を負っている様子であった。
もしかしたら、5人目のバディは弱かったから死んでしまったのではなく、負傷した姫野を庇って死んでしまったのかもしれない。私を庇って死んでしまった、という強いストレスから心の安定を保つために、「使えない雑魚だから」と自身の認知を歪ませる必要があったのではないか。
そして、現在の言葉には(生き残って欲しい…)という、アキへの特別な感情が込められているのではないだろうか。現在までのアキとの関わりの中で、自分自身を受け入れられたのかもしれない。
蛇足
前述したご褒美の提案も、デンジだけを対象にしたものではなかった。「今回悪魔を倒した人には」と、メンバー全員を対象としている。デンジだけに対しての場合、「倒せたら」でいいはずなのに、「倒した人には」としている。もちろんデンジをからかうために発せられた言葉だと思うが、もしかしたらアキに対して言ったのかもしれない。