こちら記事では【漫画版】チェンソーマンの内容に触れております。まだ、これから本編を読まれる方、結末を知りたくない方は読むことをおすすめいたしません。また、私自身の勝手な解釈も含まれています。
本編を読まれていない方は、ぜひ読んで見てください!!
あらすじ
ベッドで熟睡している所、姫野に起こされるデンジ。8階から出られるようになったか確認するも、まだ出られるきっかけすらも見つからないままであった。
メンバーも徐々に心身ともに疲労が溜まってきて、荒井とコベニは、悪魔の捜索をすることも難しい状況に。ひょうきんに振舞っている姫野も、休まず捜索しているアキも、持っていたタバコを消費しきってしまう。
そして、アキはついに捜索していた悪魔を発見する。しかし、その悪魔は、今回最初に発見した悪魔がより大きくなったものであった。
それはホテルの一室からあふれ出て、人の顔と腕、足のつなぎ目をなくし、不定形で無数につながっているような見た目をしている。
その悪魔は、デンジを喰わせれば、他の者はホテルから出してやる、と契約を持ち掛ける。そして、それを聞いていたコベニは、気絶していた部屋から包丁を構え、デンジの命を狙おうとする。
印象に残ったシーン
8階に取り残されたメンバーたちの反応
困難な状況で、人が自然にとってしまう行動なのではないか。そして、そんな状態なら、一度寝てしまい、困難な状態から一時的にでも距離を置いた方がよいのではないかと思えた。
アキ(諦めない?)
アキもホテルの8階から出ることが出来なくなるかもしれない、という予測に対し、少なからずストレスと恐怖を感じていたのではないだろうか。
そんなストレスから、アキはタバコに依存することで心の安定を図っているように描かれていた。
悪魔の能力で8階から出ることが不可能だと推測した後も、ホテル内に潜んでいる悪魔を、休まず捜索し続けていた。
そして、自分の持っていたタバコを切らしてしまったため、姫野からタバコ(姫野も最後の1本)をお裾分けしてもらい、吸っている。
また、話の冒頭では、デンジがベッドでぐっすり寝ており、その間も悪魔を探している。元々、持ってきたタバコ自体の本数も少なかったかもしれないが、短い時間で多くても1箱を吸いきっている、かもしれない…。
タバコを吸うことで、一時的にストレスは和らいでいたが、タバコを吸いきり姫野にタバコをお裾分けしてもらう前は、若干顔を強張らせ、頬に汗を1滴たらしていた。強いストレスを感じていると思われる。
周囲に不安な様子を見せていないだけで、メンバーたちの不安を煽らないようにしていたのかもしれない(もしくは、ただ虚勢を張っていただけかも…)。
しかし、諦めず悪魔を捜索していたおかげで、メンバーもアキに行動に少なからず、脱出への希望を持っていたのではないか、と思った。
コベニ(騒乱)
前回の話から、少々パニックを起こす性格であることがわかった。
今回の話では、8階に閉じ込められてからの行動や精神状態を、姫野が主観に基づいてデンジに説明していた。特にコベニは、トイレの水を飲もうとするほど混乱し、姫野によって気絶させられた、という説明がされている。
いくらひょうきんに振舞っている姫野でも、悪魔からの精神攻撃を受けている最中、他のメンバーの状態を把握しつつ、パニックを起こしているコベニのフォローするのは、あまりにも大変。読者として可哀そうだと、同情せざるを得ない。
ここでコベニを気絶させたのも、もちろん本人のためでもあるだろうが、周囲の作戦への士気をこれ以上下げないこと。そして、恐怖などの負の感情によって、ホテルに潜んでいる悪魔のエネルギーへの供給を断つことにもつながっている、と思った。
しかし、ここで気絶させられたコベニの方が荒井よりはまだ良い、と思えた。
荒井(自己防衛)
最初は悪魔の捜索をしているアキを一緒になって手伝っていたと、姫野によって説明されている。しかし、次第に8階から出られないことを実感し、その状況に恐怖感を感じてしまう。
結果、ホテルの一室にこもり、ベッドの上で布団に包まり怯えてしまっていた。自己防衛に走ってしまうこのシーン。
ここの布団に包まり、この状況に恐怖しているシーンは、他のメンバーが常軌を逸した反応をしている中で、最も等身大の反応ではないかと思った…。
臆病に見えてしまうかもしれないが、恐怖を認識し始めてから、この8階にいること自体が、徐々に心を蝕まれて状況にある。
自分自身ではもうどうにもならない、外部からの助けでどうにか助かろうとするしかない。
他の常軌を逸したメンバーたちに比べてしまうと凡夫に感じてしまうが、彼のことを決して惨めだとか、臆病者とは思えない。実際、リアルでも普通の人間はあまりにも大きい力に対して、一人では無力なもの。
しかし、コベニとは違い、気絶することなく、起きた状態で怯え続けてしまっている。この状態だと、潜んでいる悪魔にエネルギーを常に供給し続けている。
結果として、部屋から漏れだしてしまうほど、悪魔が大きく成長してしまったのだろう。
「殴ったヤツの服にこっそりガムをくっつけてやった」
アキが姫野を解放する回想シーン
デンジは姫野の吸っていたタバコの銘柄が、アキと同じものだと気づき、「それ アイツと同じタバコじゃん」と、姫野に言う。姫野は、“アキにタバコの味を教えたのは自分だ” と、いたずらな少女のような表情を見せながら答えた。
そして、再度姫野の回想シーンに入る。アキとバディを組んで直後の話だろう。当時のアキは、“骨が腐るから吸わない”という想いで、姫野からのタバコの勧めを断っていた。
そんな中、二人で街をパトロールしていると、殉職した元バディの遺族が目の前に現れた。姫野はアキにこの現場を見せないため、どこかに行くよう指示する。遺族は、街中にも関わらず、姫野の左頬に平手打ちを喰らわす。
姫野は、悪魔に仕返しをする力がないから、元バディである自分に当たることを、デビルハンターとしての仕事のうちであると、仕方なく思っていた。
しかし、姫野の想いを聞いたアキ違った。アキは、遺族に気付かれないよう、こっそりと服にガムをくっつけに行ったのであった。その行動に、文字通り腹を抱えながら大笑いする姫野。今まで曇っていた表情しか見せておらず、先ほども遺族に叩かれ、腫れた頬を押さえていた。
だが、アキの行動と発言のおかげで、頬の痛みさえもすっかりと忘れ、大笑いすることが出来た。
アキが遺族にガムをくっつけたという、ささやかな報復により、姫野は今までため込んできた遺族から向けられていた理不尽から解放された、と思った。
仮に、ここでアキが平手打ちをしたことを遺族に問い詰めていたら、姫野自身も救われなかっただろう。その理不尽な思いを今まで受け入れていたのは、やり返す気力もなくなり、一方的にやられることで、やられている自分自身も被害者の立場にして、自分自身の心を守ろうとしていたのではないか。
しかし、今回はいつもとは違い、隣にはアキがいた。アキは、やり返す気力を失ってしまった姫野の代わりに、遺族の服にガムをくっつけるという、小さくて優しいささやかな報復をした。この行動をとったからこそ、姫野は腹を抱えながら大笑いすることが出来たのではないか、と思う。
その後、中華料理店で食事をする二人。姫野は再度、タバコを進める。最初は、先ほどのやり取りと同じように、1度は断るアキだったが、「長い付き合いになりそうだから吸って欲しい」という姫野の発言で、渋々タバコを吸うことに。
回想シーンは終わり、次のページから現在の時間に戻り、現在では完璧に喫煙者になったアキが、姫野にタバコをおすそ分けしてもらうとするシーンに移る。
このシーンはとても流れがキレイに感じた。最初は拒否していたタバコも、数年後にはタバコをおすそ分けして貰うまでの中になっている。回想から現在のシーンに移るまでに、二人の人間関係を深めるドラマがしっかりとあったのだろうと想像する。